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ライナス様をお守りください。
願いを掴まえた拳をカップに向けて開く。古くから伝わるおまじないだった。
再びカップを乗せたトレイを持って、その人の元へと向かう。
同じ態勢で考え事をしているのか、手の間から見える眉間にはしわが寄っていた。
コトッ
そっと置いたつもりが小さな音を立ててしまい、覆っていた手を外すその人。
「あぁ……ありがとう」
さっき掛けた声は聞こえていなかったようだ。
その音が紅茶を差し出されたことによるものだと気づいた彼は、ゆっくり視線を上げると少女へにっこりと微笑んだ。
神の微笑みとはあまりに極上で、美しさに思わず目を細めてしまう。
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