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姿のない青年の声が疑問符を表している間に、祭壇とは向い側、大聖堂の大きな扉の前をまばゆい光が覆った。
その光は太陽を直視するよりも眩しく、驚き振り返る聖職者たちの視界を白一色に奪う。と同時に大聖堂内を風が抜け、ごおおぉぉぉ……とうなり声のような音が鳴った。
堂内が一頻り嵐のように荒れた後、うっすらと開かれる無数の目からの好奇な視線を一身に受け、彼は困ったように笑って言った。
「〝生神のドール〟目覚めた……のだが?」
これはすべて聞いた話。
二十四年前に少女はまだ生まれていなかった。
なぜそのような人の側に自分がいるのかと、今でも不思議に思う。
目の前ではおいしそうに紅茶を飲んでいるライナス。時の経過を感じていないかのように、その姿は全く変わっていないという。
「……ライナス様」
「心配はいらないよ」
今日は降誕祭。
彼の降りた大聖堂で年に一回、世界中の聖職者たちを呼び寄せて説教をする日だ。
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