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同じ時を生きるだけでもこの上ない喜びなのに、この日は主であるライナス自身の口から教えを受けられる。毎年その資格を一部の聖職者に絞っても、椅子取り合戦は免れずにいた。
その椅子の一つをどうしてか、聖職者でもないこの少女には与えられていた。
「……」
大仕事を終えてからずっと浮かない顔をしている彼を、トレイを持ったまま見つめる少女。カップの中の紅茶はもうない。
人間のように疲れなどでそんな表情をする人ではない。そもそも老いぬ体は疲れもしないのだから。
そんな彼を不安にさせることがあるとすれば一つだけ。
「もう休もう。明日にはランデンに帰らないといけないからね」
そう言う彼の顔は、いつものように朗らかな表情に戻っていた。
おやすみ、と言いベッドルームへ入っていく背中に眉をひそめる。
少女の目には、その表情がやはりどこか取って付けたもののように映っていたからだ。
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