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飯田橋を通過するところで、近寄っては遠さがってゆく長い長いホームを車窓越しに見送りながら、早島チサは音を立てず、マスクの下でにっこりと、あるいはニヤリと、何度も笑ってみた。
何度も何度も。
「はじめまして、コウジくん。早島チサといいます。こんにちは。今日からあなたの、おかあさんになります。よろしくお願いします」
想定した無難な挨拶からの、笑顔の練習のつもりだけど、さすがにわざとらしいかな。
笑顔がひきつる。
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