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それじゃあ、と軽く片手を上げ、くるりと辺りを見回したのは少女だった。
肩まで届くふわっふわの赤毛に、澄みきった空のように明るい青の瞳。
年は17か、18といったところだろう。
少女が見回した先には、“誰もいない”。
少なくとも普通の人間には何も見えないだろう。
そしてこう思うに違いない。
──彼女は空気に向かって話している。
それも、まるで“たくさんの誰か”がそこにいるように、と。
けれどここにはそんな『普通の人間』はいなかった。
彼女は部屋の中の“誰か”を見やり、口を開く。
「今日の成果を発表してくれる?」
問いかけた先で、人間に聞こえる言葉を返した者は誰もいない。
それでも彼女は“誰にも聞こえない何か”を聞いているように真剣な表情で頷き、目をまっすぐ隣へ向けた。
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