幸せな破壊

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 方法が無くなった僕は、高校を卒業と同時に逃げるようにとある田舎町に移り住んだ。  高校時代はバイトに明け暮れ、その時に溜め込んだお金があったので事はすんなりと運んだ。  その田舎町は人も少なく、みんな余所者の僕に対して警戒心があるのか無駄には関わってこない。  ソイツもここまでは追ってこないだろう。僕はホッとした反面、寂しくもあった。今度こそ、僕は本当の孤独を背負って生きていかなければいけなくなってしまったのだ。  五年の月日が流れた頃。僕の元に、ソイツが訪ねてきた。ソイツは「久しぶりだな」と言って僕に笑いかけてきた。  僕はもう限界だった。ソイツを愛おしく思ってしまった。何度も何度も名前を呼んでしまった。  だから今、僕の隣で眠っている透真は、もう壊れてしまっている。  穏やかな表情で眠る透真の隣で、僕は薬瓶に残っていた全てを口に含む。  水で流し込むと、愛おしい透真の顔を目に焼き付ける。  透真は最後まで僕を大切にしてくれた。だから僕も自分を大切にしようと思う。  最後に壊すのが自分自身で良かったと、僕は心からそう思えた。
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