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別れと
東京に行く―
長男が駅まで見送りに来てくれた。兄妹の中で一番早く上京したのは長男。結局関東に慣れなくて帰ってきたのだ。そしてその合わない空間に親も行く。表情があまり変わらない長男だが、もう行ってしまうのかと寂しそうな顔を一つ見せて元気でと見送ってくれた。高校生の時から深夜のバイトをして成績を落とすことなく、そして部活動もして学校生活を送っていた兄。バイトの給料は全額家族皆の生活費を消えていった。本当に家族思いな兄。皆が皆出来る事ではない。母が兄妹の中で一番頼りにしていた。後にも先にも母を見送りなんてこの人だけだろう。でも、この人で良かった。
新幹線の中、二人で緊張と期待感を膨らましていた空間はとても幸せなものだ。これから何があっても守っていくたった一人の肉親。地元では長男が母を守ってくれたから東京では私が何が何でも守るそう決意した出発日。
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