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初対面と
今更だが、私は子供の頃から母と同じ部屋で寝ている。習慣とは怖いものだ。誰かの仕草、息遣い、服の衣擦れがないと眠れないのだ。その時は深夜二時まで母が寝室に来ることはなかった。男と食事をすると連絡があった為、朝帰りコースかと思いつつ眠りの体制に入った。その数十分後にドアが開いた。玄関の鍵のあく音と母の声がした。帰ってきたと思い、寝たふりをきめる。寝室に入ってきたのが分かり母が寝てると誰かに呟いた。瞬時に恋人が来ていると理解した。母は翌日、朝から仕事と愚痴を零していたのを思い出し、眠るだけだろうと安易な気持ちでいた私は母を初めて不快と感じるのだ。
初めに違和感を感じたのは布団の摩擦音。何度も何度も擦れ合う音がし寝相が悪いのだと男に対し、気に触るが数分が経ち、流石に何かおかしい事に気がつく。母の少し上擦った高い声でナニかを誤魔化すような小さな咳払いが聞こえてきた。極めつけが擦り音で消え入りそう小さな喘ぎ声がした。私は周りの人より少し耳が良かったのでそれを拾ってしまったのだ。私がいる前では絶対に見せなかったのになぜ今、初対面なんてクソ食らえ。
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