32人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
…はぁ?
はぁ、やれやれ…やっと仕事が終わった…。
「腹減った~、家になんかあったかな~」
疲れきった表情を浮かべた青年が車で家路を急ぐ。
今日は寒いから、遅くまでやっているスーパーで野菜を買ってプチった鍋にでもしようか…それともコンビニおでんもいいかな…。
そんな事を考えていた。
………おでんにするか。
結局、帰路途中にあるコンビニに寄りおでんを買う。
「あったけ~…」
コンビニで買ったおでんのカップに手を当てて冷たくなった手を温めた。
おでんの中身は青年好物の大根・こんにゃく・黒はんぺん・じゃがいも・玉子である。
冷めないうちに食べたい。
安全運転を心がけながらも、スピードを上げる。
青年の家は住宅地から少し離れた周りは住宅地にある離れた隣人の畑の中にある一軒家。
その家は彼の祖母から譲り受けた家。
祖母がまだ住んでいた頃は良く青年が遊びに行っていた。
彼が幼い頃、両親が共働きだったため、祖母の家に預けられていたのもあるが、自分の家よりも居心地が良かったっていうのもある。
青年はそれほどまでにこの家が好きだった。
そして、祖母はそれを知っていた為、遺言に残したのである。
あ、あれ?朝出るとき、電気つけっぱなしだったか?
青年は自分の家に近づくにつれ、家から明かりが洩れているのに首を傾げた。
いや、待てよ…まさか空き巣…?
ドキドキしながら、車を急いで家の横に停めて車を降りた。
…空き巣だったら、どうしよう…とりあえず、いつでも通報出来るようにスマホを
、いやなんか武器になるようなものがあったか?
色々考えるが、玄関の扉に手をかけた。
警戒しながら玄関を開けると、そこには…
「…はぁ!?」
思わす、すっとんきょうな声をあげてしまった。
青年の目の前にいたのは、遅れてきたハロウィーンかと思わせる衣装を身に纏った厳つい顔の大男であった。
「そなた、遅かったな。待ちくたびれたぞ」
しかも、何故か正座で待っていた。
「あ、あんた誰だよ、不法侵入だろ?警察に通報する」
青年はスマホに動かそうとする。
が、大男の次に放った言葉で止められた。
「けいさつ?それは軍隊か?」
「警察は警察だよ、あんたみたいな不法侵入者を取り締まる国家公務員」
大男は眉間にシワを寄せた。
「コッカコウムイン…なるほど、軍隊ならば殲滅するのみ」
「な、何がなるほどだ!オレの話を聞いていたか?軍隊じゃねーし、殲滅するなんて、物騒なことを言ってんじゃねーよ!」
捲し立てるように言うと大男はギロッと睨んだ。
正座で睨まれて、青年は少し後ずさりする。
マズイ…刺激しすぎたか…?
「………」
「………」
しばしの沈黙の後、大男は言った。
「まあ、上がるがよい。さすがに、扉が開いたままだと、寒いからな」
そう言ってから、大男は立ち上がった。
そして、奥に入って行った。
「勝手に奥に行くんじゃねぇ!!」
青年は扉を閉めてから、玄関に上がって大男を追いかけた。
とにかく、警察に通報しないと。
スマホで警察に通報した。
10分後……
「坂本さん、この間この方をシェアハウスの同居人って教えてくれたじゃないですか、名前は真王宝さんでしたよね。しかし、真王さん、コスプレ似合ってますよ。坂本さんはもう、 冗談は止めてくださいね」
若い警察官が呆れたように言った。
坂本と呼ばれた青年は
「そんな事言った覚えはありませんよ!」
と言うが、警察官は笑って帰って行ってしまった。
「…なんでだよ…しかも真王 宝って…あんたの名前か?」
ガックリと項垂れた坂本。
真王は
「正確には魔王だが。あの男は真王と書いたんだ。なんかの表に」
「それはいつの話だ!オレは知らないぞ!ってかあんたはなんで、オレの家に我が物顔でいるんだ!」
「…いつか…ああ、さっき少しアヤツの記憶を改竄したんだった。
で我がここにいるのは…気がついたらここにいた」
「はぁ!?ワケわからん。こっちは疲れて腹が減って……ああ!?」
「騒々しいぞ、今度はなんだ」
「…車の中に温かいおでんを入れっぱなしだった…。温かいうちに食べようと思ったのに…」
坂本はさらに項垂れた。
「おでん…?あの箱車に入っていた、これのことか?」
真王…もとい、魔王が手にしているのは先程まで、坂本が車に入れていたおでんの入っている容器が入ったビニール袋。
魔王は坂本にそれを手渡した。
「…え?どうやって…?」
驚きのあまり、固まる…。
「まあ、細かいことはよい。とにかく、食べろ。話はそれからだ」
こうして、坂本は疑問だらけのまま、魔王と過ごすことになった。
なんでこった。
最初のコメントを投稿しよう!