第1話

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第1話

え……っと…… 俺、今、(りつ)に放課後の教室で押し倒されているところです。実況してる場合じゃないけど、頭真っ白なので目の前のことを冷静に判断しているところ……わっ! ちゅーっ?! ちゅーされてますっ! 「うーーーっ、うーうーうーっっっ!!!」 俺はおおいかぶさっている律をとにかく手当たり次第(?)殴っています。 「いてっ!」 ばかばかばかばかっ!痛がってろよ、ばかっ! 力が緩んだ隙に俺は律の下から這い出ました。脱出成功です! ってか、床に倒すな。制服真っ白になるじゃん! 男子高生が真面目に学校の掃除なんてしないでしょっ。俺はやらないぞっ。 俺はとにかく律から距離を取りました。 律、こっちを睨んでいます。うひゃあっ、迫力ありあり。 イケメンさんなのは知ってますよ。細めの目で睨んだらますます怖いって! というか、大人っぽいんだよな。この間、なにかでスーツ着たってスマホの写真見せてくれたけど、似合ってた。 「なんでだ」 ひっくい声。こっわ~。なにこの迫力。なにか怒らせるようなこと、俺、した? どっちかと言うと俺のほうが怒ってもいいよね、急にちゅーされてさっ! 「なにがっ」 「なんでキス、嫌がるんだ」 「は?わっかんねーけど、なんでキスするんだ?俺じゃないだろ。百合学(ゆりがく)のコとすればいいだろ」 百合学っていうのは、小百合学園っていううちの学校の近くの女子校ね。かわいいコが多いけど、律と一緒にいるとこいつが全部かっさらっていっちゃうんだよ。もてもてくんじゃないか。 「おまえ、俺に浮気しろっていうのか」 「ふぇっ?!」 う・わ・き……??? びっくりして固まったら、律がずかずかと俺のそばにやってきた。 あう?せっかく距離取ってたのに、近づいてきたらだめじゃん、律さん。 すっごい怒った、というか「いかりまくった」目ェしてます。怖いです。大恐怖です。なんでこんなに怒ってるの?俺、なにかした? どっちかというと俺のほうがナニかされたんですが。 「恋人と放課後2人きりになったら、キスくらいするだろ」 「こ……?」 いびと……? は? 「誰が?」 「……」 「まさか、律と俺が?」 「……そうだ」 律が無表情で返事をする。 「うそ……」 律が? 入学して同じクラスになって友達になって、その中でも「親友」と呼びたくなっている坂井律と俺が恋人……、だ、と? 俺があまりのばか面をしたのか、律の無表情が凍りついてしまった。いやいや、俺のほうが固まるわ。 「覚えてないのか?」 「おぼえ……?」 律は上着のポケットからスマホを取り出すと、写真フォルダを見せてくれた。ご丁寧に「MIZUO」と名前までつけてある。 そしてそこには、律と俺、そして俺だけの写真がずらりと並んでいた。2人の写真は「友達」としてはちょっと近すぎで、独特の雰囲気があった。甘い、というかなんというか。ふざけたのかどうか知らないけど、2人で手でハートなんか作っちゃってるかわいいのもある。 「めっちゃらぶらぶ」 「そうだよ」 「ほんとに俺ら、つき合ってるの?」 「……瑞生(みずお)、おまえ、今日、うち泊まれ」 「あ?」 俺の返事を待たず、律はどこかに電話をかけ始めた。 双方の両親とも公認の仲で、うちの親の信頼は厚いんだと律はあとで言っていた。その信頼関係のもと、うちの親から外泊許可を得ると、律は有無を言わさず俺を律んちに連れていった。 *** このお話の始まりについて ブログ お題をいただいてパラレルワールド / 「もう一度。俺と。」連載開始 https://etocoria.blogspot.com/2020/01/start-moichido.html
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