若葉の頃の新入生

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若葉の頃の新入生

あれは、5月の連休明け初日の事だった。 学校の教室では、朝のホームルームを前に、生徒のみんながわいわいがやがやとおしゃべりに花を咲かせていた。今度の連休はいつもより長かったから、久しぶりに顔を合わせたクラスメイトに、ちょっとした懐かしさを覚えたのだろう。私もさっきまで一通り挨拶回りをした後、今は手足をそわそわ揺らしながら、自分の席で時間が来るのを待っていた。 「おう、おはよう! みんな久しぶりだな!」 担任の赤沢先生が扉を開けて入って来ると一瞬だけ静かになったが、またすぐにざわつき始めた。それは、先生の後ろに見慣れない女子生徒がついて来ていたからだ。 それだけじゃない、ざわつきの訳は彼女の姿かたちにあった。ウェーブした長く鮮やかな金髪に、空の色にも海の色にも似た青い瞳、意志の強さを感じさせるきりっとした顔立ち。他にもモデルのようにスラッとしたスタイルとか色々特徴があるけれど、とにかくクラスどころか学校中探しても同じタイプがいない存在だったから。 そんな周りの声に怯える事も浮かれる事も無く佇む彼女の様子を、私は固唾を飲んで見守っていた。 「ああ、静かに! もう知ってる奴もいるかもしれないが、今日からうちのクラスに新しい仲間が入る事になった。じゃあ、ここに名前を書いて自己紹介よろしくな」 「はい!」 凛々しい声で答えた彼女は黒板に自分の名前を記した。洋風の見た目によらず縦書きで刻んだ達筆な文字に対して驚きの声が上がる中、彼女はみんなの方に向き直って挨拶を始めた。
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