初日の彼女は

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「今集まってる子と近所の席の人達で固まって写そ。ほら、席を追われたタッキーも写りにおいでよ」 「はあ? 俺写りたくねえし」 「こらぁ、遠慮すんなー!」 千佳ちゃんは立ち去ろうとする彼の背後から、ちびっ子ジャンプをして両手で彼の肩をつかむと、全体重をかけて地面に押し下げた。 「いてて! やめろ、子泣きじじい!」 彼女の強引なお誘いに、瀧本君も観念して記念写真に加わる事になった。 彼女は手際良く近くの机にダンボール箱と教科書を積み上げ、その上にスマホを立てて即席の三脚にした。 「森田さんもっと真ん中寄って! 千田(ちだ)君顔見えてないから 浮月(ふげつ)さん側に近づいて、そうそうそう! タッキー頭が切れちゃうから少ししゃがんで! よし、こんなもんかな?」 そして、私とレイネの席を中心に15人くらいがフレームに収まるよう立ち位置を指示し、構図が決まるとセルフタイマーをセットして集団の一番前に潜り込んだ。もう10秒もすればオートでシャッターが切られるという事で、みんなブレないように動きを止めた。撮影に加わっていない子達は周りで自由に動いているので、私達の時間だけが止まっているような感覚に陥った。 「ではでは、みんなスタンバイ5秒前、3、2、1!」 カウントダウンに合わせてシャッターの音が鳴ると、千佳ちゃんが止まっていた時間から真っ先に飛び出して、スマホに収めた写真の出来映えを確認した。 「うんうん……。いいね、オッケー! 後でみんなに写真送りまーす!」
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