サービスエリアにて

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彼女は浮月さんと一緒に買い物中で、それぞれ小さな買い物かごに品物を入れていた。2人ともカップに入った同じゼリーをかごに入れていたので、気になって浮月さんに聞いてみた。 「浮月さん、それは何?」 「みかんゼリーよ。ちょっと美味しそうなのがあったから。早川さんもどうかしら?」 彼女がゼリーのように涼しげな声ですすめてくれたそれは、透き通ったゼリーの中に三日月型の宝石の如く鮮やかなみかんがごろっとちりばめられていて、地元の食材ながら何とも贅沢なスイーツだ。私も買ってみようかな。 「美味しそうだよね。私はおまんじゅうとサイダーも一緒に買うんだ。そう言えば、天宮さんは?」 「あれ? ……何かあそこにいるね」 森田さんに言われてレイネの姿を探すと、私達から少し離れた冷蔵ケースの島で品物を手に取り、しげしげと眺めていた。私達はそこに向かい、何を見ているのか確かめようとすると、 「レイネ?」 「これは中々に旨そうな干物だ。御母(ごぼ)……、おば様に買って行ったら喜んで下さるだろうか?」 彼女はパック詰めされたアジの干物を持っていて、お母さんへのお土産にふさわしいか私に尋ねてきた。これも我が県の名産品の一つなんだけれど、何で干物をチョイスしたのだろうか。 「何でお土産が干物なの?」 「おば様は魚が好きだったであろう。日々の献立に魚料理が多く登場しているのがその証左だ」
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