サービスエリアにて

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確かにそれは彼女の推察通りだ。お母さんが魚料理を出す事が多いのは栄養バランスを考えての事でもあるが、自分が魚好きというのも関係している。 「日々お世話になっているのだから、旅の土産位は買わねばな」 「うーん、色々微妙だなあ……。これ作っている所、(うち)からもそんなに遠くないし、ここじゃなくても近所のスーパーで買えるかもしれないね」 「何と!」 この干物を作っている場所は、このサービスエリアから少し東に引き返した所にある近場の漁港なので、そこまで旅行のお土産感は出ないと思う。 「では、こちらはどうだろう。おじ様が好きそうだが」 今度は隣にあった瓶詰のカツオの塩辛を手に取って私に見せた。瓶の中には熟成されて黄土色になったカツオの内臓が口一杯まで入っていた。 「これもこの近くで作ってるから、さっきの干物とあまり変わらないなあ。ていうか、これお父さん好きなのかなあ……」 「天宮さん、チョイスが渋いね。私はちょっと苦手かも……」 この塩辛は、ここからちょっとだけ南に行った所にある別の漁港で作られた物なので、地理的にはそう大差無い。そして、塩辛だからかなりしょっぱいし強烈な生臭さがあるから、森田さんが言うように好き嫌いが分かれると思う。 「いや、おじ様好みだと思う。これを見てくれ」 彼女は商品紹介のPOPを指差した。そこに書かれていたメッセージは、 「えーと、『ご飯のお供はもちろん、お酒のおつまみにも最適! 熱いお湯をかけてお茶漬けにしたり、クラッカーにクリームチーズと一緒に添えてワインとのマリアージュを(たの)しむのも乙ですよ!』。あー、お父さんこういうの好きそう」
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