初日の彼女は

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「はぁー、バカ緊張した―!」 「あーあ、ダルかったわぁ」 撮影を終えたみんなが、右へ左へと散らばって行く。これでやっとジュースを買いに行ける、そう思っていた時に ――キーン、コーン、カーン、コーン!―― 無情にも、2限目の開始を告げるチャイムが鳴った。我が家のデマ情報の拡散だけならまだしも、何の記念かわからない写真撮影に時間を取られたせいで、自販機まで買いに行く時間が無くなってしまった。 「うわぁ、ジュース飲みたかったのに……」 まだ次の授業の先生が来ていないので、今からダッシュで買いに行けば間に合わない事も無いが、その間に授業が始まったら気まずいから、大人しく席について待つ事にした。 とは言え、カラカラの喉で50分間耐えないといけないのは辛い。やっぱり少しでもうるおしたかったと、陸に揚げられて元気の無くなった魚のような顔で机に突っ伏した。 「おい、大丈夫か? どうしたのだ?」 私のがっかりした様子に、さすがのレイネも気づいたようで私の肩を軽く揺すりながら声を掛けてきてくれた。 「ああ、ジュース飲みたかったなあ……。朝買ったやつは飲み切っちゃったしさ」 「なんだ、そんな事か。そうならそうと言ってくれればよい物を」 彼女はバッグに手を入れて、自分の持っている飲み物を出して私にくれようとしていた。
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