浜辺に足を踏み入れて

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浜辺に足を踏み入れて

何とか集合時間ギリギリでバスに戻れた私達は、袖で汗を拭いつつ、あと半分の行程を座って揺られる事となった。 我が校の生徒達を乗せたバスが、1台また1台とサービスエリアから出発してゆく。右側に停まっていた別のクラスのバスが私達より先に前へと進んだ時、 「……睨まれたぞ」 レイネが、そのバスに乗っていた誰かに睨まれたと私に告げた。 「誰に睨まれたの?」 「さあな、知らぬ顔だ」 一体誰なんだろう? 彼女には心当たりが無いみたいだけれど。もしや梶本先輩かとも思ったが、彼女曰く全くの別人だったそうだ。 「じゃあ気のせいじゃないの?」 「そうかも知れぬな」 彼女は入学してからの1週間、梶本先輩との一件を除き誰かと揉めた事は一切無く、ちょっと変わった所はあるがみんなからの評判も上々で、決して人に恨まれる様な人間(?)では無かった。不機嫌ではないのに怒っている風に見える顔つきの人だっているし、彼女の勘違いじゃないのかな。 遅れて私達のバスも動き出した。 浜歩き大会のスタート地点である海浜公園に着くまでにはまだ距離がある。休憩前みたいにはしゃぐ時間もたっぷり残ってはいたが、前半に飛ばした疲れが出たのか、車内のテンションは低めだ。もはやカラオケのマイクを手に取る人は誰もおらず、朝早く出発した分の仮眠をとる人もちらほら出始めた。
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