浜辺に足を踏み入れて

3/6
前へ
/356ページ
次へ
この後も目を閉じる度にちょっかいを出された。おなかの前に重ねた両手の平の上にミカンを置かれて「お地蔵さんごっこ」をさせられるわ、冷たいペットボトルを首筋にあてられるわで、全然眠れなかった。 「あっ、海だーー!!」 「よっしゃー! 海キタ――(゚∀゚)――!!」 そうこうしている内に、進行方向左手の窓いっぱいに海のパノラマが広がっていた。さっきまで近づいては離れてを繰り返していた海岸線に、今ではぴったりと寄り添うように進んでいる為、右側の席に座っている私達にもエメラルドブルーの水面の眩しさが良くわかった。そのギラつきに負けず劣らず、みんなのテンションも高まるばかりだ。 「みんな、もうそろそろ着くぞ。そこはかとなく降りる支度しとけな」 「イエッサー!!」 やっと体調が整ってきた赤沢先生が指示を出し、みんなの出撃体勢もほぼ整いつつある。 やがて、バスは海浜公園へと入った。ここが浜歩き大会のスタート地点だ。防砂林のせいで海の景色が遮られはするものの、潮の香りが漂っているここは紛れも無く浜辺だという事が伝わって来る。 そして、バスは駐車場の専用スペースでゆっくりと停止した。 「では、改めて説明を行う。浜歩き大会はここ海浜公園からスタートして22.5㎞先の海の家がゴールだ。コースは基本的に地図に記したルートを通ってもらうが、脇道の神社仏閣やお店に立ち寄る事も許可する。但し、5㎞地点と15㎞地点に設けたチェックポイントに必ず立ち寄る事。昼食は各自事前に用意してある食べ物を好きなタイミングで摂って構わないが……」 前半グロッキーだった先生も、ここではビシッと引率者の顔で諸注意を読み上げている。
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加