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「詩乃ちゃん、ヤローどもが先行っちゃったよ! あたし達も早く出よう?」
千佳ちゃんもその流れに続こうと、リュックを背負って出撃準備万端だ。
「まだ前の席の子達が出てないからダメだよ」
「もう、そうやってすぐいい子ぶるんだからー!」
「いい子ぶってなんかいないって」
浜歩き大会は競技では無い為、ゴールに一番乗りした所で賞品は出ない。制限時間内にゴールしさえすれば自分のペースで進んで良いので、つまり急ぐ必要が無い。後ろにいた田中君が暴走気味に飛び出して行ったから、変な対抗意識が芽生えたのだろうか。ふくれっ面で前の子達が降りるのを待つ彼女を、私や森田さんでなだめた。危ない危ない、歩く前から仲違いをしたら元も子もない。
前の子達が全員立ち上がって真ん中の通路に出たのを見届けた彼女はすぐさまその後ろに取り付き、
「みんな、hurry!hurry!」
「えっ? えっ?」
「望月さん、ダメだよ!」
最後尾の子の背中にタックルして、不必要にみんなを急がせた。もう、将棋倒しが起きてケガ人が出たらどうするの?
「ふー、到着ー!」
「いや、『到着ー!』じゃないし……」
バスを降りた彼女は、大きく伸びをしながら深呼吸して外の空気を堪能した。みんなが転ばず無事にバスを降りる事が出来て良かった、と私は「はぁ……」という大きなため息を吐いた。
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