浜辺に足を踏み入れて

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「まあ、いいじゃん。早く砂浜行こうよ!」 「望月さん、待って!」 千佳ちゃんは走って防砂林の奥へと消えて行き、巻き込まれるようにして森田さんが後を追った。 「やれやれ、まるで子犬のようだな。(ひも)で繋いでおいてはどうだ?」 「そうした方がいいかも」 レイネの大人びたジョークに、この時だけは同意した。必死に追いかける森田さんが、リードを手放して愛犬に逃げられてしまった飼い主に見えたくらいだ。森田さんは大きなカメラを首に下げていたから、本当に大変だったと思う。 「よし、我々も参ろうぞ」 「うん」 私達も砂浜に向かって歩き出した。 駐車場からは防砂林に阻まれて見えないが、砂浜までは3分もあればたどり着く距離だ。防砂林を抜けると波の音がいよいよ騒がしくなり、空はスクリーンが降りてきたかのように視界の上下へと広がる。 並んで歩いていた彼女が前へと出たので、私も遅れまいと歩調を速める。あとは目の前の防潮堤を越えるだけだ。階段を昇り、そして下ると――、 「やっと着いたな」 「うん」 私達を迎えてくれたのは、千里の道にすら感じる左右に長く伸びた海岸線と、水神の息吹の如く堂々と波打ち寄せる青い海だ。 やっとスタートだ。スニーカーの底から伝わる砂の熱さは、私達に浜歩き大会の幕開けを強く感じさせるのだった。
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