67人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ、いいじゃん。早く砂浜行こうよ!」
「望月さん、待って!」
千佳ちゃんは走って防砂林の奥へと消えて行き、巻き込まれるようにして森田さんが後を追った。
「やれやれ、まるで子犬のようだな。紐で繋いでおいてはどうだ?」
「そうした方がいいかも」
レイネの大人びたジョークに、この時だけは同意した。必死に追いかける森田さんが、リードを手放して愛犬に逃げられてしまった飼い主に見えたくらいだ。森田さんは大きなカメラを首に下げていたから、本当に大変だったと思う。
「よし、我々も参ろうぞ」
「うん」
私達も砂浜に向かって歩き出した。
駐車場からは防砂林に阻まれて見えないが、砂浜までは3分もあればたどり着く距離だ。防砂林を抜けると波の音がいよいよ騒がしくなり、空はスクリーンが降りてきたかのように視界の上下へと広がる。
並んで歩いていた彼女が前へと出たので、私も遅れまいと歩調を速める。あとは目の前の防潮堤を越えるだけだ。階段を昇り、そして下ると――、
「やっと着いたな」
「うん」
私達を迎えてくれたのは、千里の道にすら感じる左右に長く伸びた海岸線と、水神の息吹の如く堂々と波打ち寄せる青い海だ。
やっとスタートだ。スニーカーの底から伝わる砂の熱さは、私達に浜歩き大会の幕開けを強く感じさせるのだった。
最初のコメントを投稿しよう!