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まずは、一緒に歩くと約束していた千佳ちゃんを見つけよう。また置いていくとうるさいからね。
彼女は先に浜辺へと向かったので、この近くにいるはずだ。これだけ大勢の人がいると、ちっこい彼女を見つけるのは少し難易度が高い。ケータイでどこにいるか聞いてもいいのだけれど、まあそうするまでも無いだろう。
私はレイネを連れて波打ち際に向かい、水がかからない様気を付けながら左右を見回した。すると、
「あっ、やっぱりここにいた」
右手の方で、元気に波とたわむれている千佳ちゃんを発見した。長年の付き合いで、彼女がどこにいるのかは大体予想がついていた。海に来たら、きっと1度は波打ち際ではしゃぐだろうと思った。服装もTシャツにデニムの短パン、足元はスポーツサンダルと、水辺で遊ぶのにちょうど良い恰好だったし。
「詩乃ちゃん遅いよー!」
「はいはい、お待たせ。森田さんは?」
千佳ちゃんを追いかけて行った森田さん、彼女からも「一緒に行こう」と誘われていた。彼女はどこにいるのだろう。
「あそこにいるよ」
千佳ちゃんが指差した50メートル程先で、森田さんは海に向かってカメラを構えていた。
足元の波を気にしつつ、「ピピッ、パシパシパシッ!」っと軽快なシャッター音を鳴らして撮影する彼女。その邪魔にならないよう、静かに近づく。キリの良い所で声を掛けてみよう。
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