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気を取り直してとぼとぼと歩く。濡れた靴を履くのは気持ちが悪いので、しばらくの間左手で持ちながら裸足で歩く事にした。ちょっとしたアクシデントはあったが、スタートから5㎞地点にあるチェックポイントまではあと1㎞くらいと、順調なペースだ。
「あー、足が疲れたなあ……。詩乃ちゃん、おぶってよー」
それを乱すように、千佳ちゃんが砂の上で止まってうずくまった。まだスタートしたばかりじゃないか。おんぶだって重たいから嫌だし、片手に靴を持っている状態ならなおさらだ。
「私の靴が濡れちゃったのを爆笑してた人の言う事は聞きません。みんな、わがまま駄々っ子は置いてこ?」
「そうね」
「だらしがない奴だ」
私の後に続いて、みんなも冷たく突き放して彼女を置いて行く事にした。
「わーん! みんな待ってー!」
みんなに見放された彼女は、慌ててクラウチングスタートみたいなダッシュで私達に追いついた。やればできるじゃないの、たまにはガツンと言っておいた方がいいね。
「詩乃ちゃん許してよー、イカ助けのご褒美に塩飴あげるから」
「ありがと」
千佳ちゃんが、1つずつ個包装された塩飴を片手がふさがった私の代わりに開けてそっと口に入れてくれた。ほのかに塩気の利いた飴玉は汗ばむ陽気の対策にちょうど良く、いい事をした後だからかいつもよりひと味美味しく感じた。
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