浜辺で出会うもの

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「おお、すごい……!」 「やっぱ実物はオーラが違うなぁ……」 「ラブチュータコサンが可愛過ぎる件について」 「ダートもいけそうな体つきしてるよな、父系はアメリカ血統な訳だし」 私には何だかよくわからないけれど、このラブチュータコサン号はすごい馬らしい。お兄ちゃんの友達が感嘆の声を上げ、タレントを見た時のネット書き込みのような感想を漏らし、小難しい競馬知識を披露したのを、私は首を傾げながら聞いていた。 「写真を撮ってもいいですか?」 「どうぞ。ただし、フラッシュは厳禁だよ」 「ありがとうございます」 快く撮影を許可してくれた馬上のお兄さんのご厚意に、お兄ちゃんと競馬仲間は馬を刺激しない様、充分に距離をとって行儀よく撮影に入った。馬は馬で、暴れる事無くすらりとした脚をピンと伸ばしたモデル立ちで、時々頭をゆらしては、クリっとした瞳でカメラ小僧達を見ていた。 「なんか、アイドルとかレイヤーみたいな馬だね。堂々としてポーズもきまってるし」 本格的なカメラを持った森田さんが言うと妙な説得力があるが、確かにこの馬は何とも言えない愛嬌があった。 「良かったら、誰かまたがってみるかい?」 馬上のお兄さんから、思いがけない提案を受けた。 「おい、どうするどうする?」 「乗ってみたいけど、怖そう……」 なかなか出来ない体験だけに興味はあるものの、落馬したらケガをする可能性もあるだけに、みんな慎重にならざるを得なかった。
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