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「詩乃ちゃん乗ってみたら?」
「私?」
千佳ちゃんに乗る事を勧められた。面白そうだけれど、どうしようかな。
「詩乃はやめておけ」
「何でよ?」
なのに、お兄ちゃんから「待った」がかかった。何でだろう、今日はスカートじゃなくてパンツスタイルだし、特に問題は無いはずだけれど。
「お前は体格がいいから、馬に負担が……」
「そんなに重くない!」
彼は、大真面目な顔でレディに対して大変失礼な言葉を吐いた。「サラブレッドの脚は❝ガラスの脚❞と呼ばれていて、負担がかかりやすい」とは聞かされていたが、私がまたがったくらいで折れはしないと思う。
「あっはっは! お兄さんひどーい!」
千佳ちゃんが彼女のお母さん譲りの大声で笑うものだから、それが周りの人達の笑いを誘い、私はさらし者にされたみたいでいたたまれなくなった。お兄ちゃんのバカ競馬ファン、馬に蹴られてしまえばいいのに!
「僕の方が重いから心配ないよ、ほぼ毎日乗っているからね。このコは500kgくらいあってオトコ馬顔負けのパワーを持ってるから、そちらのお嬢さんなんか乗っけてる事わからないんじゃないかな」
馬上のお兄さんが優しくフォローしてくれた。うちのお兄ちゃんにもこういう所を見習って欲しい。
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