浜辺で出会うもの

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「早川さん、乗ってみたら? 写真撮るよ」 「でも、まだ靴が乾いてないしなあ……」 馬に乗る為には、(あぶみ)につま先を引っかけないといけないが、濡れた靴では滑りそうで危険だ。今日の陽気をもってしても、靴が履けるようになるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。裸足で乗る訳にもいかないだろうし。 「では、私に跨らせて頂けないでしょうか?」 決めかねている私をよそに、レイネが騎乗に名乗りを上げた。 「そうこなくっちゃ! 今降りるからちょっと待っててね」 馬上のお兄さんは嬉しそうにほほ笑むと、降りる体勢に入った。左足を鐙から外し、次に右足を外して後ろから左側に回す。そうして、おなかを中心に馬に対して十字に重なった状態から、少し反動をつけて後ろ向きに飛び降りた。あんなに高い馬の背中から颯爽と降りられるのはすごいな。 「じゃあ、乗る前に支度をしてもらいます。ヘルメットとプロテクターと、一応ふくらはぎの所もカバーつけとこうか」 「はい」 お兄さんに渡された装備を、レイネが上から順番に身に着けていく。ヘルメットとベスト型のプロテクターにひざ下から足首まであるカバーを付けた後、お兄さんがチェックする。 「あのお兄さん、イケメンでカッコいいね……」 「やっぱ思う? 私が立候補すれば良かった!」 ひざまずいてレイネの足カバーのフィット感を調整するお兄さんの姿を、他のクラスの女子達が羨望の眼差しで見つめる。
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