浜辺で出会うもの

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「素晴らしい! 一発で乗れるとはセンスあるね」 「いえいえ、アシストが良かったからです」 「いや全然だよ。君はジャンプ力が強いから、僕はほとんど手を添えてただけだよ」 お兄さんが絶賛したジャンプ力は、カミナリ様特有の飛ぶ力による物だと思うので、見ている側としては少し心臓に悪いが、これくらいなら正体がバレるという事も無いだろう。 「では、特別サービスとして、ちょっとだけ歩かせてみよう」 お兄さんの計らいで、砂浜を歩かせて貰える事になった。さすがにレイネ1人で操縦させる訳にはいかず、お兄さんが綱を引いて半径10m程度をぐるりと回る程度の軽い運動ではあるものの、それでも充分にありがたかった。 私達見物人は、安全の為に馬から距離を取って「パドック」のような感覚で動きを眺めたり写真を撮ったりした。 「あの子、馬の上でも姿勢が良くてカッコいいね」 「天宮さん、ちゃんと足で馬を動かせてる。馬術の選手みたい」 背中に棒でも入れてるかのようにまっすぐな姿勢は馬上でも崩れず、両足を馬のおなかに当てて上手く指示を与えられているようで、実に様になっている。 「脚の送りにやや覇気が無い気もするが、放牧中ならこんな物か」 「ぐるぐる回るタコサンが可愛過ぎる件」 「美しい……。レティシアに似ている……」 ラブチュータコサンは競走馬なので、どうしても競馬ファンの感想が大きく聞こえてしまうのは仕方が無いか。ちなみに、レティシアというのはフランスの一流女性ジョッキーの名前らしい。
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