浜辺で出会うもの

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ちょっと変だけれど、のどかなひと時が流れていて楽しいな。 なのに突然、それをかき乱す者が現れた。 人だかりの外側から、1機のドローンが飛んで来た。片手で持てそうなくらいコンパクトなその飛行物体は、私達の頭の上をスレスレで通過し、馬目掛けて飛んで行く。 「マナーを知らない奴がいるな、一体どこのバカだ」 お兄ちゃんが辛辣な言葉を吐きながら、近くにいると思われる操縦者を探す。 すると、後方から田中君がスマホを横向きに持って近づいてくるのが見えた。こんな事を言うのもなんだけれど、かなり怪しい。 「これ、すっげぇ()えそうだわー」 「田中! 馬の近くはまずいって!」 やっぱり彼が操縦者だ。彼は仲間の声もお構い無しに、スマホの画面を覗き込む。このドローンはスマホをリモコン兼モニターとして使うタイプのようだ。 馬は大きな身体とは裏腹に、とても臆病な生き物と言われている。いきなり得体の知れない物体が近づいてきて、ビックリしないだろうか。 当の馬はと言えば、目の前に現れたドローンに興味津々で鼻を近づけている。怯えた様子は見られないが、プロペラが顔に当たらないか心配だ。 「おい、馬が怖がるだろが! 早くどけろ!!」 うちのお兄ちゃんの競馬仲間の1人が急に烈火のごとく怒り出した。パッと見、文化系の大人しそうなタイプだったのに、馬への愛を爆発させて田中君に詰め寄った。
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