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「やばいよ詩乃ちゃん、レイネちゃんが振り落とされちゃうよ!」
千佳ちゃんが泣きそうな顔で私に告げる。田中君達への被害は水際で食い止められたが、今度はレイネがロデオに誘われてしまった。まあ、綱を引くお兄さんがなだめてくれているから、そんなに心配はいらないと思うけれど。
予想通り、馬は徐々に落ち着きを取り戻し、馬上の揺れもほぼ平常に戻って来た。あとは完全に止まるのを待つばかりだ。
「えっ!!??」
「うわっ!!」
思ってもみなかった事が起きた。馬がまだ動いているというのに彼女の身体が垂直に浮き上がると、
「落ちた!?」
「キャー!!」
どよめきと悲鳴に包まれる中、2秒くらいの短い間宙を舞い、そのまま馬の左側にスライドする形で着地した。砂浜に尻餅はおろか片膝さえ着く事の無い、見事なものだった。
「お、おい早川、もしかしてあれは跳んだのか!?」
「❝フライングディスマウント❞だと……!?」
そう、これは決して振り落とされたんじゃない、レイネ自ら跳んだのだ。彼女と自分の双方に視線が行ったり来たりな友達からの問いかけを、うちのお兄ちゃんが静かに受け止める。彼にとっても信じられない光景だったらしく、そうズレてもいないメガネの位置を指で直していた。
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