五月雨のライトニングガール2

浜辺で出会うもの

「君、大丈夫かい？」
「はい」

彼女は綱を引くお兄さんの言葉に、何事も無かったような涼しい顔で答えた。

「ていうか、大丈夫なんて聞くまでもないか……。君、どう見ても乗馬経験あるよね？」
「まあ、以前少々……」
「だよね。あのジャンプなんか僕より上手いし、ハハッ！」
「いえ、久しぶりで緊張しました。……おお、タコサン、驚かせてしまって済まないな」

2人は、すっかり大人しくなった馬の鼻面や頭を優しく撫でながら、乗馬トークに花を咲かせていた。うーん、なんだかしっくり来ないなあ……。

周囲の驚きと賞賛のざわめきが止まらない中、うちのお兄ちゃんに疑問をぶつけてみた。

「あのさ、さっきのジャンプするやつって、普通に出来ちゃう物なのかな？」
「普通には出来んぞ。訓練を積めば出来るようになる人はいるがな」
「妹(いもうと)ちゃん、あれは外国のジョッキーがレースに勝った時によくやるパフォーマンスだぜ。レティシアもこの前やってたよ」
「へぇ……」

あれはすごい技には違いないけれど、人間でも出来る技だとわかって良かった。それなら、彼女が人間じゃないとバレる事は無いのだから。いや、良かったというのもやっぱり違う気がして、結局はもやもやが残ってしまった。

彼女は借りていた装備一式を上から順番に外し、砂や馬の毛を手で払ってからお兄さんにお礼を言って返した。そして私達のもとに帰って来た。