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「そっか! アイツらに友達のふりして追っかけさせて、チャラーノをボコボコにしてもらう作戦だね? さっすが浮月さん!」
「いや、絶対に違うでしょ……」
千佳ちゃんが「お主も悪よのう」と言わんばかりのやらしい笑顔で浮月さんに尋ねたので、真っ先に私が否定した。浮月さんがそんな暗殺組織の幹部みたいに残酷な指令を出す訳ないのに。
「あら、私そんな怖い女に見えるかしら?」
言われた方の彼女は、特に腹を立てた様子も無いけれど、にこやかに笑って返す訳でも無かった。感情を顔に出さない分、見ている方としては何を思っているのかわからなくてヒヤヒヤする。幼なじみの私にならともかく、浮月さんにまでズケズケと失礼な冗談を言うなんて、千佳ちゃんのフレンドリーな性格も考え物だ。
「じゃ、僕達はそろそろ施設に戻るから。遠足楽しんでね」
「ありがとうございました。タコサン号の活躍を祈っています」
「はは、どうも。しっかりと立て直して次のレースをめざすから、応援よろしくね。それじゃ」
お兄さんは綱を引いて馬とともに海へ背を向けて進むと、砂浜と道路の間のスロープを滑らない様ゆっくりと上がり、車の往来が無い事を確認すると、速足で道路を渡り、松林の奥へと消えて行った。あの先には、牧場があるのかもしれない。
「よし、そろそろ私達も先に進むとしよう」
「そうだね」
私達の行きたい場所は多く、あまりのんびりしていたら、全てを周りきれなくなってしまう。「こんな時、馬に乗って移動出来たらどんなに楽だろうか」なんて話をしながら、私達一行は再び歩き出した。
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