聖なる社へ

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「だって、急に馬が立ち上がったんだもん、雷に打たれたみたいにさ。あんな都合よく馬を止められるかなあって」 「失礼な、馬を御す心得くらいある。……まあ、ドローンから注意を逸らす為に微量の電気を流したのは確かだが」 彼女は電撃を放った事を認めた。悪い事に使った訳では無いが、これは注意しておいた方がいいだろう。 「むやみに電撃を使わないでって言ってるでしょ?」 「ふん、容易く露見する程、稚拙な術ではない」 「さっきのジャンプだって何なの!? 目立つしエネルギーの無駄遣いだからやめてよ」 「懐かしさからつい気分が乗ってしまってな。観衆の前であれくらいのサービスをしても罰は当たるまい」 「そんなサービスしなくてもいいから!」 私のダメ出しに対してのれんに腕押しな態度を取る彼女に、どうにかしてわかってもらおうと、私の口調は自然と強く速くなっていく。 「あれあれ、詩乃ちゃん達がケンカしてるよ?」 「えっ、どうかしたの?」 ちょうどその場面を、千佳ちゃん達に見られてしまった。 「やだなあ、ケンカなんてしてないよっ!」 「ていうか、詩乃ちゃんが一方的に怒ってたような……」 ケンカでは無いけれど、こうなった事情を正直に話す事も出来ない。となると、いつものようにごまかすしかないが、正直こういうのは苦手だ。
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