聖なる社へ

6/13
前へ
/356ページ
次へ
「人聞きが悪いなぁ……。2人きりじゃなくて他の先生達と一緒に駅前のバル行っただけ。隣の富田先生もいたんだから」 小野寺先生は頬を赤らめる事も無く淡々と否定し、隣に座っていたE~H組担当の富田先生もはっきりとうなずいた。これは普通の飲み会っぽい気がする。 「赤沢先生、バスで吐きそうになって大変だったんだよー」 「どうしようもないなぁ……。あれはあの男が悪いの。みんな『程々でやめときなさい』って止めたのに、クラフトビールとワインを水感覚で何杯も飲んじゃうんだから……」 小野寺先生は富田先生と顔を見合わせて、ため息をついた。これじゃフォローのしようが無いな。 「そんなダメな大人の事はどうでもいいとして……、天宮さん、調子はどうかな?」 「はい、お陰様で快調です」 「うん、顔色もいいし体調管理バッチリだね、その調子で頑張ってきなさい」 小野寺先生は、この前保健室に運び込まれたレイネの体調を気にかけてくれていた。ご覧の通り彼女は元気いっぱいで、いつもならすぐに「歩き疲れた」と不満を漏らす所なのに、まだその声も聞かれないのはとても良い事だ。 でも、「体調管理バッチリ」と言われると納得が行かない。その元気の秘訣は、今朝私のおヘソからいつもより多めにエネルギーを吸い取ったからだ。おかげで私はしばらくの間、ベッドから立ち上がれなかったんだから。 「あなた達はこれからどっち方面に行くの?」 この公園を出た後は2つのルートに分かれており、小野寺先生の言う「どっち」とは、「このまま海岸沿いを歩く」か「この近くの高台にある神社に寄ってから海岸沿いに戻る」かの2択の事だ。
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加