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「全く、陰でコソコソ人の悪口を言うとはけしからん奴だ。君達、あまり浮かれて周りの人に迷惑をかけてはいかんぞ。高校生としての自覚を持って行動するように」
「は、はい」
千佳ちゃんが先生の機嫌を損ねたせいでお小言を言われて、楽しい雰囲気に水を差されてしまった。まあ、言っている事はごもっともだけれど。
公園を出た私達は、右へ進んで神社がある方向へと歩きだした。ここからはコンクリートの上を歩く事になるものの、濡れていた靴も素足でならギリギリ履ける程度のしっとり感になったので、かかとが動かないようしっかりと靴紐を締め、歩く体勢も整えた。
立て看板によれば、ここから神社までは450mと、そう遠くは無いらしい。だったら休憩は到着してからにしようと、一旦お預けとなった。
でも、私達はすぐにその判断を後悔する事となる。
「何この坂! めっちゃ急なんだけど!」
「ハァハァ……、結構しんどいかも……」
100mくらい歩いた頃から、急に足が重たく感じた。その原因は目の前に続く坂道だ。
高台にある神社にたどり着くためには、必ずこの坂を登らなければならず、参拝する上での最大の難所とされている。レイネとの下調べや先輩達から事前に情報は得ていたが、想像以上だった。
この坂には『いちょう坂』なんてかわいい名前がついているが、それとは真逆で地獄のように残酷な坂だ。坂の入り口から50mくらいまではなだらかで、どうってことはないように思わせておいて、そこから少しずつ左にカーブしながらどんどん傾斜がきつくなってゆく。そうして気づいた頃には、いつの間にか山登りみたいな坂道に誘われているのだった。
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