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「これは不味いな……」
ふと、レイネが空を見上げてつぶやいた。
「何がまずいの?」
「……遅かったか」
ポツ……、ポツ、ポツポツ、ポツポツ――――――――!!
突然、空から雨粒が落ちて来た。それは、木漏れ日を遮っていた頭上の枝葉の隙間をいとも簡単にすり抜け、シャワーのように私達の身体を濡らす。
「わわ、カメラを守らなきゃ!」
「はぁ……、厄介なものね」
「皆、走って登るのだ! さすればこの雨も凌げる!」
「わかった!」
みんな戸惑いつつもバッグから折りたたみ傘を取り出し、レイネの大号令で坂をダッシュして登った。
私の傘の骨は所々凹んでいて、そこに突然の雨が加わると、先月起きた事件の事を思い出さずにはいられず、何となく不吉な予感がした。
「キャー! みんな待ってー!!」
ただ、この恵みの雨(?)のおかげで、千佳ちゃんが坂を登る気になってくれたようで、傘も差さずびしょ濡れのハムスターみたいにちょこまかとしたストライドで私達を追っかけてきた。
乳酸地獄に耐えながら100mほど走り続けると、神社の入り口とみられる石造りの大きな鳥居が見えて来た。
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