聖なる社へ

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「ぜぇ、ぜぇ……。やっと着いた……」 喉がカラカラで声もスムーズに出ないが、これでもう走らなくていいんだという安堵があった。 「もうやだ……。もう走りたくない……!」 「千佳ちゃん、おつかれ。頑張ったね」 遅れて走って来た千佳ちゃんは、石畳にひざをついて倒れこんだ。何とかついてきてくれて、本当に良かった。 「あれ? 雨、止んだのかな?」 「まだ降ってるけど……、もしかして葉っぱがガードしてる?」 木々の隙間から見える雨の勢いはさほど衰えていないようだけれど、私達にかかる量は明らかに減っている。それは枝葉の数が圧倒的に多いからだと思われる。事実、千佳ちゃんは傘を差さずにいるのにほとんどかかっていない。 「ああ。この地の特徴として、神社の周辺に近づく程、木々の密度が高まり、雨風を減衰する効果がある。かつてこの一帯は、❝雨宿りの杜❞と呼ばれていたそうだ」 「天宮さん、すごい! よく知ってるね!」 「そっか! だからみんなに走るように言ったんだね!」 彼女が毎日本を読んで調べた知識が役に立った。古い文献の知識も結構使えるんだなあ。 「それでは、この石段を登るとしよう。この石段は手強いぞ」 鳥居の先には石段が長く続いており、私達がいる場所からは神社の建物を見る事が出来なかった。 「手ごわいって……。ちなみに、何段かわかる……?」 登る前の心の準備としてレイネに聞いてみると……、 「224段あるそうだ、心して登らねばな」 「ええ……!?」 「もうやだー!!」 そんな残酷なデータなんて、聞かなければ良かった……。
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