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森の頂の社にて
「では、行こう」
レイネが何のためらいも無く、先陣を切って石段を登り始めたので、私達も泣き言を言っている場合ではないと、覚悟を決めて石段に一歩を踏み出す。
30段目まで登ると、次第に階段の特徴がつかめてきた。森に囲まれた古い神社らしく、石段は所々苔が生えているが滑りやすくは無く、一段一段の高さや幅も上り下りするのにちょうどいいサイズに設計されているので、思ったよりも楽に登れる事がわかった。雨も密集した木々が防いでくれるので、傘を差していればほとんど濡れなかった。
これに関しては、レイネのとっさの判断が光ったファインプレーだったと思う。私は、3段先を歩く彼女に追いついて声を掛けた。
「レイネがこの森の事を知ってたおかげで、被害が少なくて済んだよ。ありがとう」
「うーむ、咄嗟の判断が出来たと言う点では良かったのだが、私ともあろう者が雨の奇襲を受けるとは、情けない……」
「あー……。それはしょうがないんじゃないの……?」
さぞ気分がいいのかと思いきや、意外な所で凹んでいたらしく、雨が降る事をもっと早くに予知出来なかったものかと、浮かない表情で残念がっていた。
総数224段の石段は、頂上まで一直線に伸びているようなおっかない階段では無く、約50段毎に踊り場が設けられ、何回かジグザグに方向を変えながら進むつづら折りの階段だった。踊り場は息を整えたり、遅れてついて来る千佳ちゃんを待ったりするのに役立った。
また、ちょっと感動したのは、石段の両脇に置かれた和紙で出来た灯籠で、
「あっ、やっぱり近づいたら光った!」
「どうなってるんだろ、これ」
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