森の頂の社にて

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私達が近づくと、灯籠がぼんやりと光って前方を照らしてくれた。これなら薄暗い森の中でも安全に登れるし、幻想的な光に包まれて歩けるのも楽しかった。センサーライトの役割をしつつも風景に溶け込むデザインなのはポイントが高いと思う。近頃の神社やお寺では、ライトアップイベントを行っている所もあるとニュースで見た事があるが、もしかしたらその為の装置なのかもしれない。 灯籠の温かな光に励まされて石段を登り続けると、目の前には鳥居、そして奥には神社の瓦屋根が姿を現した。ゴールが見えたら不思議と足が軽くなり、残り20段からカウントダウンを開始すると、ラストスパートであっという間に3・2・1と近づき、その勢いのまま鳥居をくぐった。 「よし……、着いたな」 「ああ、疲れた……」 ついに頂上の神社にたどり着いた。第一声は「疲れた」だったものの、それ以上に登り切ったという喜びや達成感もあった。 「やったー! ヤッホー!」 千佳ちゃんなんて、神社なのに大声で山登りの開放感を表現してしまったくらいだから。 いつの間にか雨も止み、空には太陽が雲を引き裂くかのようにさんさんと輝いていた。今までは日が当たらない森の中にいて肌寒かったが、これなら上着を脱いでも良さそうだ。 天気が良くなった事もあり、森田さんはカメラを取り出して風景の撮影に入った。神社の境内はもちろんだけれど、鳥居から石段の方を撮っても高低差があって絵になると喜んでいた。
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