森の頂の社にて

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「でも、神社で素肌を見せるのはあまり良くないと思うわよ。あそこに更衣室があるから、貸してもらったら?」 「ラッキー! みんな、待っててもらっていい?」 「うん、先にお参りしてるよ」 そんな訳で、千佳ちゃんが予備の服に着替えている間、ほかのメンバーは境内を自由に散策する事になった。 私と森田さんはストレートに拝殿へお賽銭を入れに、浮月さんとレイネはその手前にある社務所で御朱印を授けてもらう為、しばし別行動となった。 神社は初詣かお祭りの時ぐらいにしか訪れないので、お参りの作法もおぼつかない。手水舎で手を浄めてから拝殿へ向かい、賽銭箱に5円玉を入れてガラガラと鈴のついた紐を揺らした。ここまでは何となくわかったが、その後の所作は、前に並んでいた人の動きをマネて礼と拍手をして、無難に立ち去った。 こんな状態ではお願い事もはっきりと固まらず、借りた文献では海の安全を祈願する為に建てられた神社という事だったので、とりあえず浜歩きの無事を祈っておいた。 「ここは、足腰が丈夫になって足が速くなるっていうご利益もあるから、最近ランナーの聖地になってるんだって」 「へえー」 そんなご利益もあると知ったのは、終わった後で森田さんに言われてからだった。そういえば、私達の前後にもランニングウェアでお参りに来ている人達がいた。神社の方でも更衣室の貸し出しどころか、足洗い場やシャワールームも設置しているというサービスの良さで参拝客をもてなしているんだって。
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