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「おーい、詩乃ちゃん達こっちー!」
着替えを終えた千佳ちゃんが、絵馬が掛けてある場所から私達を手招きしていたので、行ってみる事にした。
「見て見て! タッキーが絵馬書いてるよ」
千佳ちゃんは瀧本君が奉納した絵馬をニヤニヤと見つめていた。私達よりも先に着いていたと思われる彼の姿は、もう近くには無い。一体どんな願い事をしたのかと読んでみると、
『走攻守そろったプレイヤーになれますように! 静波高校・瀧本拓斗』
野球部らしい上達祈願だった。バッティングと守備は自分で何とかしないといけないけれど、足が速くなる願いは叶うといいね。
「タッキーってば相変わらずヤンチャな字体で書くよね、ヘタだなー」
「そう? ❝元気はつらつ!❞って感じでいいと思うけどなあ」
千佳ちゃんが笑っていた理由は、瀧本君独特の字体だ。彼の書く文字は全体的に大きく、行があるノートはいつもはみ出しがちだ。一文字ずつ見ると決して下手では無いが、漢字もひらがなも全部同じ大きさで書くから、バランスが悪くてちょっと読みにくい時がある。
「多分、その願いは叶うと思うわよ」
御朱印を受け終えた浮月さんとレイネが戻ってきた。
「何でわかるの?」
「これだけ険しい道を歩かされれば、筋力が上がって足も速くなろうと言う物。何とも皮肉な事だ」
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