森の頂の社にて

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「あー、それは言えてるかも」 レイネの言う事も一理ある。神頼みをしなくても山道で自然と鍛えられるのだから、その分の手柄も神社が横取りしているのかも、なんて罰当たりな考えを抱いてしまった。 境内は予想以上に広く、拝殿と本殿を取り囲むように休憩所や石碑などが敷地のあちこちにちりばめられており、見所が多い。もう少し自由行動という事で、千佳ちゃんと浮月さんを休憩所に残し森田さんは写真撮影に、私とレイネは散策に出掛けた。 「この神社、いちょうの木がとてもキレイだねえ」 「ああ、何と心憎いもてなしだろうか」 この風景はレイネのお眼鏡に適ったようで、感激のあまり苦笑いの表情すら浮かべていた。 それもそのはず、この神社の周りにはいちょうの木がぐるりと100本以上植えられている。しかも、5月らしくみずみずしい若葉だけでなく、黄色く秋色に染まった葉のいちょうが交互に植わっていた。この2色が同時に存在するだけでも珍しいのに、若葉も秋色も薄手の葉に日の光を透かしてステンドグラスのように輝き、神秘的な風景を作り出していた。カミナリ様といえど、こんなにキレイな物を見るのは初めてに違いない。 我が校の生徒をはじめ、そこかしこで木々をバックに記念撮影をしている人がいるが、ごく自然な事だろう。まだまだ旅の途中だけれど、この先これ以上に映える物もお目にかかれないような、とても美しい風景だ。私達も後で記念撮影したいな。
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