森の頂の社にて

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「あれって何かな?」 歩いている内に、小さな社を見つけた。畳3枚分くらいの面積に建っている木造のそれは、一見すると小屋みたいだが、拝殿と同じくしめ縄や賽銭箱が備わっていた。 「ああ、あれもれっきとした神社だ。この神社や土地に縁のある神を祀っているのだ」 「へえ、そうなんだ!」 神社の中に別の神社があるなんて、初めて知った。彼女も一応神様だから、その辺の事情に詳しいのかも。 「あれだ、❝ミカンの中のちっちゃいミカン❞みたいな感じ?」 「言わんとする事は分からなくも無いが、その例えでは肯定しかねる」 私の例えはお気に召さなかったらしく、眉毛をグッと内寄せして難しい表情だ。 「よし、参ろうぞ」 「あれはお参りしなくてもいいんじゃない?」 小さい社にお参りしている人は誰もおらず、そもそも何の神様を祀っているかすらわからないので、お参りする気は無かった。 「何を言うか。同じ敷地にある神社なのに、あちらだけ訪ねては不公平であろう。そこの社から『おいおい、わしの所には参らんのかい(´・ω・`)』と、悲しみの声が漏れておるわ」 「わかったよ、お参りするよ……」 私の耳にそういう声は一切届いていないが、そう言われると罪悪感が生じるので、彼女に付き合う事とした。
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