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「ふーん」
働いていない私達にはあまり関係無いが、せっかくなので祈っておこう。財布に入っていた最後の5円玉を投げ入れて、お父さんお母さんが働いている会社の業績アップを願った。
「最後はあそこだ」
「まだあるの!?」
今度こそ終わったと思ったら、最後にもう1ヶ所行かないとダメみたいだ。彼女の指の先には、私達の背丈ギリギリの高さの鳥居と、離れた場所から見ている事を考えても明らかに小さな社の姿があった。
「詩乃よ」
「行けばいいんでしょ、行けば……」
彼女の圧力に負けて、日当たりの悪い隅っこにひっそりと佇んでいる社を訪ねた。
神社の人達にすら忘れられていそうなほど奥まった場所で鳥居をくぐると、石の台座の上に木製のミニチュア神社のような物が載っていた。大きさは約40㎝四方で、神棚か小さめの仏壇くらいのサイズだった。
こんなかわいらしい物でも神社と呼べるのか、疑ってしまう。社の手前にあるティッシュ箱サイズの賽銭箱を覗いてみたけれど、小銭が数枚入っているだけで、ここを訪れる人がいかに少ないかを物語っていた。
早くお参りを終えようと、財布から小銭を取り出す。5円玉は使い切ってしまった為、他の硬貨で代用しなくてはならない。1円玉では少ない気がするし、10円と50円が出払っているとは言え、100円を入れるのはためらってしまう。
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