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「宜しければ、その社を背景に写真を撮って差し上げましょう」
「いいんですか?」
「勿論です」
彼は、そっと手を伸ばして私からスマホを受け取ると、後ずさりして撮影ポイントを探し始めた。手の出し方が自然で圧を感じないので、思わずご厚意に甘えてしまったが、なんてスマートな人なんだろう。
「それではお撮りします、準備は宜しいですか? それでは、3・2・1……」
パシャッ!
「撮れました。貴女方の旅の良い記念になれば幸いです。それでは……」
「ありがとうございました!」
神主さんは私にスマホを返すと、静かに社務所の方へと去っていった。後ろ姿まで優雅で、通り道にそよ風が吹き渡るようだった。
「よし、そろそろ皆と合流しよう」
「それもそうだね」
もう集合しないと制限時間までにゴール出来なくなってしまう。みんなが待つ休憩所まで、早歩きで向かった。
『美臍神社』の前で撮った写真に写る私の笑顔は、動揺していたせいでだいぶカチコチで、出来れば撮り直したかった。
でも、境内の散策は楽しかった。辛かったものの、山道を苦労して登ってきた甲斐があったと思う。
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