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「さてと……」
お姉さんは後ろの洗い場から、野菜と並んで水に浸かっていた1本の瓶を取り出した。瓶の中には乳白色の液体が入っていて、彼女は外側の水滴をタオルで拭うと、ふたを開けて陶製のタンブラーに5杯注いだ。
「それではさっそく、こちらの『一夜酒』をどうぞ。味見して、感想を聞かせてくれないかな?」
私達への頼み事とは、商品の試飲だった。とてもありがたい事なんだけれど、一つ大きな問題が……。
「あの、私達未成年なのでお酒は飲めないんですが……」
「あはは! やだ詩乃ちゃん、恥ずかしー! 一夜酒って言うのは甘酒の事だよ」
「そうなの!?」
「うふふっ。だから安心して、ぐびぐびっとどうぞ。あなた達くらいの年頃の子達に意見を聞きたいの」
甘酒にそんな別名があるとは知らなかったし、千佳ちゃんが知っているのも意外だった。
「望月さんもさっき教えてもらったばかりでしょう?」
「しーっ! それを言っちゃあおしまいよ!」
そりゃそうだよね、おかしいと思った。浮月さんがバラさなかったら、危うくだまされる所だった。
「ささ、飲んで飲んで」
「いただきまーす!」
お姉さんに勧められるがまま、各々がタンブラーを手に取り甘酒を口に流し込んだ。
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