下り坂はブレーキをかけて

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お寿司は好きだけれど、今日は自力で完走すると決めたので、お断りした。しかし、そんなあっさり納得してくれるなら苦労はしない。 「レイネちゃん、疲れてるでしょ? 休んで行こうよ」 「いえ、まだまだ気力充分です」 「森田ちゃん、あの店、オーシャンビューが売りなんだ。そのカメラで撮りたくない?」 「き、今日は大丈夫です……」 「そこの浮月さんなんか、いかにも和の物が好きそうじゃん。一緒に青じその天ぷら食べようよ」 「いただきません」 先輩は断られ続けてもめげずに、あの手この手のセールストークを駆使して誘い込もうとする。こんなに暑苦しい人をどうやってかわせばいいだろうか。 「ハアハア……、望月もいまーす!」 やっと私達に追いついた千佳ちゃんが、ド〇ンちゃんみたいな存在アピールをして話に入って来た。 「何だ、お前かよ」 千佳ちゃんが登場するやいなや、彼の言葉から熱が急激に失われた。 「ちょっと、扱いひどくないですかー?」 「今大事な話をしてるんだから、お前はどっか行っててくれ」 千佳ちゃんがほっぺたをふくらませて不満をあらわにしているのに先輩は塩対応で、彼にしては珍しい態度を取り続けた。そして、初対面ではなさそうな雰囲気も気になった。
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