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「文献によれば、ここは鎌倉時代末期に造られたらしい、この松の木を標にしてな。昔は樹木を目印として用いていたという」
「天宮さん、詳しいんだね! すごい!」
「我々の行程からすると、ここは6分目と言った所だろう。即ち、第2のチェックポイントもそう遠くはないという訳だ。ゴール付近にも別の一里塚があるが……」
レイネ先生お得意の歴史の講義が波の如く押し寄せる。彼女は千佳ちゃんみたいにベラベラしゃべるタイプでは無いが、あれだけ頑張って調べ物をしていた分、人に話したくてしょうがないのかもしれない。
沢山しゃべってすっかり愛着の湧いてしまった松をバックに、三脚を立てて記念写真を撮った後、やっとスロープを下りて浜辺に足を踏み入れた。
「あー、気持ちいい! やっぱ海サイコー!」
神社や坂道を歩いた後だと、砂の熱さや潮の香りも再び新鮮に受け止める事が出来る。走ったおかげで制限時間もどうにか目途がつき、余計に気分が上がって来た。
狭い歩道から広々とした浜辺に場所が変わり、視界に入る人の数も段違いに増えた。その中には、私達より先にスタートしたクラスの生徒が多数おり、彼らに追いついた形となった。
「ここまで来たって事は……、どこかその辺にいないかな?」
千佳ちゃんが背伸びをしつつ周りを見回して、誰かを探すような仕草をした。
「千佳ちゃん、誰を探してるの?」
「茉莉子ちゃんだよ。さっき❝この辺にいる❞って言ってたから」
「おおっと、茉莉子ちゃん……」
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