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それを聞いた彼女の気持ちが落ち着いたようで良かった。
いや、良くは無かった。
茉莉子ちゃんが私の事をずっと睨んでいたのを放置したままだった。このままだと大爆発して周りを巻き込んでしまうおそれがあるので、こわごわしながら近づいていった。
「茉莉子ちゃん、久しぶり」
「早川さん、遅かったね。どうせ道に迷ってモタモタしてたんでしょ」
「いや、迷ってはいないよ……」
案の定、トゲのある言葉が返って来た。というか、前までは「詩乃」って下の名前で呼んでいたのに他人行儀だ。
「ささ、後は若いお2人に任せて……。うららちゃんとさやかちゃんとシピンとひとみんもおっすー!」
「おっすー!」
千佳ちゃんは既に全員と知り合いのようで、ハイタッチで合流を喜んだ。勝手に茉莉子ちゃんを見つけた癖に、私と茉莉子ちゃんを2人きりで放置するのはやめて欲しかった。
「私達、丘の上の神社に行ってたんだよ。いちょう並木がきれいで建物は神秘的で美味しい甘酒も飲めたし、とっても素敵な所だったんだ」
「あっそ。てか私そこ行った事無いし、聞いてもわかんないから言わなくていいんだけど」
「あ、そう……」
私達の会話は今日の日差しのように温まる気配が見られず、むしろ海風が冷たく吹きすさぶようだった。
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