浜辺の決斗?

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「違うから! あたしは詩乃の事なんかどうだっていいんだから!」 それで、プライドの高い彼女はあくまで認めようとしないのだけれど、劣勢のジャッジはもはや(くつがえ)りようが無く、 「早川さん、仲良しの幼なじみが2人も同じ高校だなんてうらやましいな」 「何て(みにく)いのかしら。この現代に般若の姿を拝む事になるとはね……」 「うっくぅ……、もうやだ……」 森田さんと浮月さんから憧れと哀れみの言葉をもろに受け、とうとう膝から砂浜に崩れ落ちてK.O負けを喫した。 私だって、いつまでもこんな思いはしたくない。私は、彼女の体勢に合わせて中腰になり、目の前で手を差し伸べると、 「茉莉子ちゃんごめんね。今度みんなで駅前のお店に抹茶ジェラート食べに行こうよ」 仲直りの印として、駅前で人気のスイーツショップに行く事を提案した。そこは中学生の時テレビで紹介されていたのを見つけて、千佳ちゃん茉莉子ちゃんの3人で行った思い出の店だ。あの頃はお金が無くて1個の抹茶ジェラートをみんなでシェアした事もあったけれど、おこづかいの金額もアップした今なら、もっとちょくちょく食べに行けると思うから。 「……あんたのオゴリだからね。あたしは甘いのを食べるから、あんたは一番苦くて渋いの食べなさいよ!」 「何でそうなるかな……」 こうやって素直に「うん、行こう」って言わないのも、いつもの茉莉子ちゃんだ。淋しかった子の言葉とはとても思えないけれど。
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