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最後に、我が家のお弁当も紹介しておく事にする。
家ではお母さんがお弁当を作ってくれる。忙しくて作れない時は代わりにお弁当代をくれる事もあるけれど、今日はお兄ちゃんの分と合わせて3人前を早起きして作ってくれた。
紹介と言っても、少し量が多めな事以外は至って普通だ。カミナリ様であるレイネも人間と同じ物を口にする事が出来るので、そこはとても助かっている。
はたして、今日は何が入っているだろうか。1段タイプで幅広のお弁当箱のフタを開けると、左半分は白いご飯で真ん中には梅干しが載っていて、右側のおかずスペースには人参やピーマンの入った肉野菜炒めに、ひじきと大豆の煮物が収まっていた。うん、大体いつもと同じだ。
「詩乃ちゃん、それは何?」
「これは……、ニョッキにトマトソースをかけたやつだね」
そう、今日はいつもと違う物としてもう1品、ニョッキを使ったおかずが入っていた。レイネが家に来て初めての夕食の時、お母さんが作ったのを彼女は大変気に入り、好物として挙げるようになった。それを聞いたお母さんも気を良くしたのか、連休中はニョッキを使った献立が急に増えてしまい、私やお兄ちゃんは飽き飽きしていた。
「おば様が私の好物を入れて下さったのだ。何と有難い事か……」
「そんな感激する事は無いんだよ……?」
彼女は箸でつまんだニョッキをしみじみと見つめながら、お母さんに思いを馳せていた。たかがニョッキ一つでそんな大げさなリアクションをとるのはやめてほしい。おかげでこっちは、ニョッキのもちもち地獄なんだから。
「ニョッキが好きって珍しいね。早川さんのお母さんもおしゃれでいいなあ」
「う、うん、ありがとう」
森田さんの言葉には、思わず苦笑いで返してしまった。レイネがニョッキを好きな理由、それは「真ん中がへこんだお団子みたいな形が、おヘソに似ているから」だなんて、口が裂けても言えない……。
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