浜辺の決斗?

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「森田さん、大丈夫……?」 「…………」 森田さんに声を掛けても、反応が返ってこない。カメラについた砂を一心不乱に払い、レンズやファインダーの状態を心配そうに見つめる彼女を邪魔してはいけないような気がした。 本当ならこの場にいなくてはいけないはずの人の姿が見えない、彼女に謝るべき田中君の事だ。 彼のドローンも無傷とはいいがたく、カメラを倒した直後に羽根が1枚外れて制御不能となり、近くの砂地に不時着していた。彼は真っ先に機体を回収しに向かうと、地を這う姿勢になって外れて飛んで行った羽根を探した。それもすぐに見つかると、三脚に引っ掛かった時に生じた羽根の曲がりを手で整え、機体に取り付けた。 悪運が強いのか機体に大きな損傷は無く、彼がスマホをタップするとヘリポート代わりの石から垂直離陸してテスト飛行を始めた。 「あぶねー、壊れたかと思った!」 何て無神経なんだろう、記念撮影の邪魔をして人を危ない目に遭わせた上にカメラまで倒しているのに、謝りもせずにドローンの方を優先するなんて。 その空気の読めなさは、操縦にも表れている。あんな事があったばかりだというのに、ドローンは森田さんの近くを通り抜け、再び千佳ちゃん達被写体の方へと接近していった。 「田中ー! ドローンいじってないで謝っとけって!!」
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