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仲間の忠告を彼が素直に聞けていたなら、大惨事は起きなかっただろう。
「はいはい、❝どうもすいません❞ ハハハッ!」
彼はみんなの前でドローンの上昇・下降を繰り返し、謝る気が感じられないパフォーマンスで挑発した。
「にゃろー!」
叩き落とそうと飛び跳ねて追いかける千佳ちゃんをあざ笑うかのように、機体は彼女を絶妙な距離で引きつけながら飛行する。彼女が疲れて追いかけるのをやめると、機体はゆらゆら左右に揺れながら辺りを漂った。
一人一人の前で一度空中停止しては移動を繰り返す不気味な動きは、搭載されているカメラで撮影でもしているのだろうか。みんなが害虫を見るような目で動きを追う機体は、茉莉子ちゃんや浮月さんの前をギリギリで通過すると、次はレイネに接近した。
バチッ――!!――
その時、空中で何かが弾けるような音がしたかと思うと、次の瞬間、ドローンは勢いよく砂に叩きつけられ、その衝撃で羽根は四方八方に飛び散った。
「おい、どうしたんだ!?」
「え、今何が起こったの!?」
突然の出来事に、田中君やみんなが一斉に墜落現場に集まった。
被害は深刻だった。三脚に絡まって落ちた時とは違い、機体は中心が黒く焼け焦げ、細い煙が立ち上っていた。羽根は全て機体から失われ、近くに落ちていた一枚は螺旋状にねじれていた。手の施しようの無い状態で、もう二度と空を飛ぶ事は無いだろう。
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